不器用な彼氏
用意された1週間という期間は、あっという間に過ぎ去り、気が付けば本日が最終日。

結局、あれから、日常の業務と、この研修の講師(?)で一日が終わり、彼とは音信不通…。と言っても同じ建物内にいるので、会おうと思えば会えるのだけれど、あえてそうしなかったのは、私なりの小さなプライド。

もちろん、彼の方から、何かアクションを起こしてくることを期待していたのだけど…。

“これじゃ、ただの同僚だった頃に戻ったみたい…”

深いため息と共に、まるで現実味のない発想まで浮かんでしまう。

ついネガティブに考えがちになっている自分に喝を入れ、まずは自分に与えられた『仕事』をキチンとやり終えようと、最終日の研修に、気持ちを切り替える。

今日は、最後と言うこともあり、実際に2階にあるTM係のフロアで、通常のTMが行う業務や実際に業者やお客様の、簡単な相談を受けたりと、実践に近い形の研修を行ってみる。

案の定、通常TMには存在するはずのない、若い女性がいるために、TM担当とその周りの男性陣までそわそわしだし、主任の古賀さんなどは、用もないのに、私の席の周りを何周もし、目の前の直さんに至っては、いつもの業者に向ける厳しい顔はどこへやら、時折目をつぶって、何とか彼女の麗しい香りをゲットするのに必死の形相だった。

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