夢がかなうまで
夢がかなうまで


八時を過ぎたあたりから、雪が降り始めた。
窓枠に積もっていく白い雪を見つめていると、ため息が漏れた。


15年前、セーラー服のうえにコートを羽織った私は、都会に出る興奮と自分の未来に胸を高鳴らせて、新幹線の窓に何度も自分の顔を映していた。

そして今、私はあの時と逆方向に向かう新幹線に乗り、やはり窓に映る自分を眺めている。
あのころ憧れた都会風の美女にはなれなかったけれど、今の私はどんなときにどんな服を着ればいいかよく知っているし、かかとの高い靴をはいても転んだりしない。
15年間で私が手に入れたものは、しかし、これだけだ。

私は来月から香港に異動になる。一応昇進という形をとっているが、これは私を本社のキャリア組から外すための異動なのだろうとうすうす感じていた。私の会社では、いままでに部長以上の役職についた女性はいない。ある程度昇進すると、女性は本社から出され戻ることはない。

組合に守られている係長以下ならばともかく、課長の私に拒否権は無い。
香港へいく準備をしている私の元に、同窓会の葉書が舞い込んだのは本当に偶然だった。
ずっと帰らずにいた地元が急に懐かしくなった私は、新幹線に乗った。


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