今度は逆に、俺から行くから。
ライトをつけないまま、夜景が広がる窓辺で後ろから抱きしめる。
「楓。ずっと会いたかった」
声が震える。そっとこっちを向かせると、涙目だった。
ここだ。『好きだ』と言おうとして息を吸った瞬間、遮られる。
「他に好きな人がいるのかと思った」
え? 何言ってんの?
「行動はまだしてないって言ったから」
「いや、だから」
今してるだろ?
「キスだけだなんて、知らなかったし。いつも、言葉が足りないんだよ」
言いながら、俺の胸を叩いて泣きだす。なんだよ、言い訳したよ、あの時も。
泣くなよ、おい。予想外の流れになり、抱き寄せて髪をなでる。
「でも好きなの」
うわ。言われた。嬉しいけど、ちょっと待てよ。俺から行くんだって。今大事なところなんだって。
「私がいるって長谷ちゃんに聞いて、申し込んだの?」
「そう。会いたかったんだよ」
「部屋も先に予約しといたの?」
「そうだよ。マメだろ?」
言いたいこと言った楓は、急に立ち直って質問責めにしてきた。
もう俺の営業プランはボロボロだ。天井を仰いで投げやりに答えていった。