今度は逆に、俺から行くから。

「私のこと、好きなの?」

言わされんのか、俺。これほど準備しといて、結局楓のペースか。

かなわないなと腕の中の彼女と目を合わせて、意外な表情に驚く。余裕で聞いてると思ったのに、不安げに見上げていた。

そうか。はっきり言わなきゃわかんないんだったな。めんどくさいけどかわいいな、ほんと。

「好きだよ」

言いながらキスをする。2年分の想いがこもった長いキスを。言葉なんかじゃなくても、わかれよ。


やっと自分のペースを取り戻して、耳元で囁く。営業の命はクロージング、本契約だ。

「俺が楓を幸せにするから。信じて」

一瞬息を呑んだ音がして、小さな声で「はい」と返事が来た。いつもの強気とは別人だ。

よし。最後は俺のペースだ。勝った。
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