切リ取リマスカ?
試合当日
それから試合当日まで、楓先輩は1年生のクラスに来ることはなくなっていた。


やっぱり、思った通りだ。


楓先輩があんなに行動的になれるのは、いつも一緒にいるクラスメートの存在があるからだと思っていた。


その2人の関係を切り取ってしまったから、楓先輩の行動が大人しくなっているのだ。


放課後になるとグラウンドには現れるけれど、自分から大雅に声をかけるような事はしていなかった。


友人がいなくなったことで性格事態がガラッと変わってしまったようで、メイクもファッションも目立たなくなり、学年1の美少女とも言われなくなっていた。


その様子を見てあたしはとても満足していた。


大雅と楓先輩の関係を切る事はできなかったけれど、これは想像以上にいい結果になったと言えるだろう。


なにより、目障りな楓先輩を教室で見なくてもいいという点では、大成功だ。


グラウンドであたしと視線がぶつかると、楓先輩はビクッと肩を震わせて逃げるように帰って行く。


今までは彼女のあたしの存在なんて見向きもしていなかったくせに、あれは友人たちにそそのかされて調子に乗っていただけみたいだ。


「大雅、頑張って!!」


邪魔者がいなくなったあたしはグラウンドで走る大雅へ向けて、大きな声援を送ったのだった。
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