切リ取リマスカ?
☆☆☆

そして数日後の日曜日。


ついに試合の日が来ていた。


朝からソワソワして落ち着かず、試合開始の2時間前には会場に到着していた。


大雅からもらったチケットで関係者席に座る。


普段は大雅の両親と色々会話をしながら試合開始を待つのだけれど、今日はなんとなく無言になってしまう。


サッカー界の大物もこの試合を見学に来ているとかで、関係者席にも緊張が漂っている。


そして、ようやくキックオフの時間が来た。


大雅がグラウンドに出て来る。


その目は真っ直ぐにボールを見つめていて、輝いているのがわかった。


その姿を見ているだけであたしの胸は高鳴った。


こんなにカッコいい人が自分の彼氏だなんて、今だに信じられないくらいだ。


今日の大雅はとても調子がいいようで、ボールが回ってくれば率先して攻撃を仕掛けて行く。


一気に相手チームのゴール付近まで走り、仲間にパスを回してシュートを決める。


前半30分で佐原高校は2点入れてリードしている状態だった。


「すごい、すごいよ今日の大雅は!!」


休憩時間に入り、思わずそう呟いた。


今までで一番輝いているように見えるのは、きっと気のせいじゃない。


「後半戦を安心して見る事ができるわね」


大雅のお母さんにそう言われて、あたしは大きく頷いた。


「後半からはもっともっと得点を伸ばしてほしいですね」


そしてできれば大雅のシュートが見たかった。


いいパスのおかげでいいシュートが打てるのはわかっているが、やはり得点を入れてほしいと思ってしまう。
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