切リ取リマスカ?
思いで
その後、あたしは何をしていても大雅のことが気になり、心から楽しむことができないままだった。


美味しいものを食べても可愛い服を見ても、気持ちは沈んだまま。


家に帰ってきてもそれは変わらず、両親に熱があるのかと心配されたくらいだった。


夕飯を食べてお風呂に入り、10時前にはベッドの中にもぐり込んでいた。


このまま眠れればいいのに、大雅の噂が気になって眠る事もできない。


仕方なくスマホを取り出して、サッカーの練習中の大雅の写真を眺めていた。


一生懸命走り、汗を流し、夢に向かって全力だった大雅。


その姿を見なくなってもう一週間も立っているなんて、信じられない思いだ。


「大雅……」


写真の中の大雅をそっと撫でる。


あたしと大雅が出会ったのは中学2年生の頃だった。


偶然同じクラスになり、少しは会話もあった。


だけど最初は男友達以外に何でもなかった。


それがある日、図書委員の仕事で帰る時間が遅くなった時、グラウンドで1人熱心サッカーの練習をしている大雅の姿を見かけたのだ。


夕焼けの中真剣にボールを向き合っている大雅はものすごくかっこよくて、気が付けばあたしは大雅の事を好きになっていた。


大雅の事をもっと知りたいと思い、積極的に話しかけるようになると、大雅がどれほどサッカーが好きなのかがよくわかりはじめていた。


そして、そんな大雅の事を好きだと言う女の子が沢山いるということも。
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