初恋
宇津木は心配だった。


この叔父家族に葵だけでは太刀打ちできない。


紫月がせめて遺言状を書いていれば婚約者の葵に有利になっただろう。


金庫を調べても遺言状はなかった。


「結城様、葵様はまだショック状態でして・・・」


宇津木が腰を折り言う。


「そんなの関係ない この屋敷から早く出て行ってもらいたい 私たちにその権利があるのだからな」


叔父が馬鹿にしたように口を開いた。


一番近い親戚は彼らだった。


まだ入籍しておらず遺言状のない葵はここに住む資格がなかった。


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