副社長は甘くて強引
「……直哉さん」
彼の名を呼んだ私が瞳を閉じると、ふたつの唇が隙間なく重なり合った。甘くとろけるようなくちづけは徐々に深みを増していく。唇の端から吐息を漏らしつつ夢中でキスに応えていると、彼が動きを止めた。
「酒の味がするな。飲んでいたのか?」
舌を絡ませ合ったからこそわかる指摘を受け、胸がドキリと跳ね上がる。
「はい。少しだけ」
「そうか。今日は仕事納めだからな」
「……はい」
三週間振りに彼と会い、高ぶっていた気持ちが急激に冷えていく。
そうだ、私……。
首もとで揺らめく、はずし忘れたネックレスに触れる。
佐川に押しつけられたネックレスを身に着けているということは、その思いを受け入れた、と誤解されてしまうかもしれない。
私が好きなのは、副社長だけなのに……。
不安が胸いっぱいに広がっていく。
「ん? どうした?」
「い、いえ。なにも……」
「そうか? それなら遠慮はしないぞ」
「えっ? ……ぁ」
彼の手が両肩に触れ、抵抗する間もなくベッドの上に体を押し倒された。でも彼とこうなることを望んでいたはずなのに、その気になれない。
佐川との間にあったことを打ち明けよう。そして副社長のことが好きだと伝えよう。
そう決意したとき、彼の唇が首筋に触れた。しかしその動きがすぐに止まる。
「これは自分で買ったのか?」
「……いえ」
首もとのルビーのネックレスを見つめる彼に答える。
「これはウチの商品だな。……誰からもらった?」
「……同期の佐川です」
彼は私に覆いかぶさっていた体を起すと、大きなため息を吐き出す。