副社長は甘くて強引
なんか、こういうのって頼りがいがあっていいな……。
私に気を使いつつも、リードしてくれる佐川を見てそう思った。オーダーが終わるとジョッキを合わせて乾杯をする。黄金色の液体に口をつけると、渇いた喉が瞬く間に潤う。
仕事終わりのビールが格別においしいのはなぜだろう。そんなことを思いながら「プハァ」と息を吐き出した。
「大橋、オヤジくさいな」
「うるさい!」
意地悪なことを言う佐川に軽く言い返すと、どちらともなく笑い声をあげる。
佐川はイイ男だ。見た目もかっこいいし、さりげない優しさに嫌味がなくスマートだし、冗談も通じる。
そんな佐川に彼女がいないほうがおかしい。そう思いつつ、佐川に尋ねる。
「ねえ、佐川って彼女いるの?」
「いない」
「へえ、そうなんだ。でも好きな子はいるんでしょ?」
「まあね」
彼女はいないけれど好きな子はいるんだ。それは同じ職場の子? それとも私が知らない子?
佐川への興味が尽きない。
「好きな子って誰?」
「……それは言えない」
「嘘つき、私の質問にはなんでも答えるって言ったのに」
「〝なんでも〟とは言ったけど、〝今答える〟とは言ってないからね」
お互いが軽く不満を口にすると料理が運ばれてきた。野菜の盛り合わせに霜降りの和牛が食欲をそそる。
「おいしそう」
思わず声をあげると佐川が小さく笑う。
「色気より食い気か」
「悪い?」
「大橋が元気なら別に悪くないけど」