緋女 ~前編~
私は頷いた。
ショウのことで不満に思うことはたくさんあった。
子供っぽくない考え方。
偽物でつくったようなたくさんの部分。
ケイのこと本当に知らないの、とか。
本当に、色々。
でもそれ以上に、今私は知りたい___。
今までふざけたり、野望を語ったりそんなとこしか私に見せなかったくせに、今さらなんでそんな表情をするのか。
その漆黒の瞳に何が映っているのか。
ただそれだけを。
「………僕さ、さっき見た通り体を変化させることができるんだ。見た目だけじゃない。声帯、性器もろもろ全部変化できる」
「全部?」
「そう。でも、架空の誰かにはなることができない。なれるのは既に存在している人で、僕が触ったことのある人。一回でも触ったらその人の見えないところも含めて全て、コピーできる」
「じゃあ、本当に私にもなれるわけね」
「うん。こっそりレヴィの体も見ほうだーい」
「………」
笑わない漆黒の瞳に、さっきだったら怒っていたような台詞に何を言えばいいか分からなくなった。
「ひいた?でも、とても便利な能力だよ」
ショウがさらりとそう言う。
「__違うでしょ」
「ん、何が?あー、分かった。レヴィの裸を見れるの便利って言ったこと怒ってるんだー」
「だから、違うって!」
私は思わず怒鳴っていた。
こんなこと人生で初めてくらいなかんじだ。
でも、そのくらいこの少年が悲しかった。
悲しすぎた。
「自分を低めるような言い方、ショウには似合わないんだから、………やめなよ」