白い狐は出会いの季節
ゾワッ...!!!


一気に背中に鳥肌がたつ。



「は、はい...。」


私の声は震えていた。


裏返ったかすれた声が零れた。



「お前だよな??昼にぶっ飛ばしてくれたの。」



ぶっ飛ばした??ふざけるな。飛んできたのを避けただけだろう。


そう言おうとしても体、口が動かない。




「やっぱこいつっすよ!!!!俺を怪我させた奴!!!」



そう言う男の鼻には絆創膏が。


ああ、あの出血量たいしたこと無かったのか。


現実逃避からか私の脳はどうでもいい事を考え出した。



いや、かなり危険な状況だけどな。



人通りの少ない道に私という平凡な女子高校生。


そしてそれを囲む不良グループ男子二名。



もし私が武術を習っていてなにか抵抗する術があればこの状況をなんとも思わないのだろう。


だが、そんな都合の良い話は漫画の中のヒロインの話だ。



「俺ら曇天のメンバーに手を出したって言うことは...どう言う事かわかってんだろうな??」


ジリッ...。と顔が怖い男が距離を詰めてくる。




どうしよう。私、ここで終わりかもしれない。


きっとまた殴りかかってくる。


ギリギリで、一人の攻撃を避けたとしてももう一人が私の隙を狙ってくるだろう。


逃げたところで女子と男子の走るスピードの差なんて分かりきっている。


しかも私は運動音痴。


誰か助けを呼ぼうか?


私は周りを見回した。




...。誰もいない。


道路の先に車が見えるだけだ。


いや、いた所で引っ越してきたばかりの私を助けてくれる可能性なんて知れているが。



「歯食いしばれ転校生!!!!」



いよいよ、男が殴りかかってくる!!


体は一歩も動いてくれず、ただ、来るであろう衝撃を待った。

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