白い狐は出会いの季節
車が動いてから数分たった。
到着時刻を見るとあと、数十分で着くんだろう。
「……」
「…………」
……。しかしさっきからおじさんも私も無言だ。
沈黙になると、さっきまでの事を思い出してしまう。
私は静寂に耐えられなくなって、口を開いた。
「あの!おじさん名前なんて言うんですか!?」
「おじさん?あぁ、俺の事か。」
うっ、地雷を踏み抜いたか?
おじさんなんて言い方酷かったかな?
でも、お兄さんって言う割にはかなりいい年に見えるし……。
「俺はもう50だ。おじさんって言われる歳では無くなったよ。」
とおじさん、いや50の男は照れくさそうに笑った。
きゅっ、と一瞬心臓が跳ねた。
くっ、これが胸きゅんってやつかっ。
「俺の名前は白狐業。白狐組って言うのは俺の名前から来てる。光や周りが勝手に呼び始めたんだがな。」