白い狐は出会いの季節


「振り返らないでください。」




ぴたっ、と体が止まる。
強めに発言されたその言葉に私は従った。



「僕を探さないでください。

それより、かえでに聞いてほしいことがあるのです。」





私に、聞いてほしいこと?



「そうです。」



夢の中なのに、なんで私以外の人とまともに会話してるんだろう。



「夢の中、と言うより精神世界というべきでしょうか。」



えっ!?私の思ってることが伝わってる!?



「喋るより、楽でしょう。


話が逸れました。
かえでに聞いてほしいこと、それは」








「今、この時間。
今現在のかえでの精神世界でのこの時間が終わったら、すぐにあなたの人生の分岐点がやってきます。」





……は?



分岐点?私の人生??



「思い当たりがあるでしょう。

かえでがさっきまで考えていたこと。」




えっと、白狐組に入るか、入らないか、だったかな。




「かえでを襲ったあの男達、覚えてますか。

かなり凶暴でしたね。まあ僕が何とかしましたが。」




じゃあ、電信柱を壊したのも曇天を倒したのも、光さんの銃撃を避けたのも……!?




「はい、まあ。

かえで。白狐組に入ればそれ以上の災いが起こります。」




そうだよ、ね。だって光さん銃もってたし、他の人だって只者じゃ無いはず。



ま、真唯だって、きっと。



「分かっているならいいんです。僕はかえでを幸せにしたい。

かえでが満足する選択をして下さい。
僕はそれに従います。」




……白狐組に入っても何も言わないの。



「ええ。」



その場から逃げ出しても?



「かえでの選択ですから。」



君は助けてくれる?



「……。かえでが、望めば。」




< 94 / 121 >

この作品をシェア

pagetop