I line xx
「荷物ありがとう愛果。」


そう話かけると


嬉しそうな愛果の声が


聞こえてきた


それが嬉しい


顔の表情が緩むのが自分でもわかった


夏の騒がしさが何処かへ消えて


木々に葉の色が変わっているのを


眺めた


愛果と話ながら


心の中で彼女を驚かせる為に


彼女に内緒にしている


ある事ばかりを考えている自分


愛果の最高の笑顔が早く見たくて


それしか頭の中になかった


二週間ほど前に風邪でダウンしてから


愛果が荷物を送ってきたのは


二度目だった


予定のない休日の午後


いつもの様に


遅いブランチを済ませると


ランニングをして


昼食を取り


昼寝から起きてぼんやりテレビを見ながら


ラインで愛果と話をしていた時


部屋の呼び出しのチャイムが鳴った


掃除をすると話す愛果にまたメッセージを


送ると送信して


急いで玄関の扉を開けると


宅配業者が小さな小包を持って立っていた


お礼を言って荷物を受け取ると


ドアを閉めて差し出し人を確認する


愛果からだった


中身はクリスマスのオーナメントと


ドライフルーツのシリアル


お湯に溶かして飲むレモネードだった


風邪でダウンした夜


伺う様な声で電話をしてきた愛果


本当は声が聞けただけで嬉しかった


そして


こんなふうに彼女に考えさせてしまう自分が


たまらなく悔しかった


彼女を幸せにしたやりたくて


一緒にいたくて


頑張ったぶんだけ


あと一歩が叶わずその事で頭が


いっぱいだったのだ


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