御曹司と愛されふたり暮らし
「二次会行く人ー」
店を出てから、日焼けの男性がみんなにそう尋ねる。
私以外の女友だちはみんな手を挙げたけど、私はドッと疲れてしまい、これ以上はもうムリだと自己判断し、「帰ります」と伝えた。
「じゃあ、戸山さん以外はみんなであっちの大通りにあるカラオケボックスに移動――」
という日焼けの男性の言葉を遮って、ハルくんが、
「あ、俺も帰るわ」
とみんなに伝える。
ええええーっと、女性たちからはブーイングが起こる。
「すみません。明日も仕事が早くて」
ハルくんがそう答えると、女性陣も誰もそれ以上はなにも言えない様子だった。
その後、私とハルくん以外のみんなは大通りの方へと歩いていった。
みんなの背中が見えなくなったころ、ハルくんが私に言った。
「改めて、久しぶり」
その笑顔は、やっぱりやさしくて、昔のままで。
私はどうしてもドキドキしてしまうけれど、”合コン”という慣れないニガテな環境から解放されたのもあってか、不思議とさっきほどの緊張はなくて、「……うん」と、ちゃんと彼の目を見てそう答えられた。
「飲みながらもっと話したかったんだけど、お前、ずっと遠くでちまちま酒飲んでてちっとも俺の方来ないし」
「あはは、ごめん」
「いーよ。どうせ合コンとかニガテなんだろ? いや、未だに異性がニガテってところか」
「えっ、そんなことまで覚えてるの?」
驚きだ。存在と名前を覚えてくれていたことだけでもすごくうれしかったのに、そんな細かいことまで記憶してくれていたなんて。
「覚えてるよ。だって……」
「え?」
「あ、いや……。
とにかく、もっと話したかったな。俺からお前の方行きたかったけど、なんかほかの女の子たちがなぜか俺のこと離してくれなかったし」
「なぜかって……。ハルくんがカッコよすぎるからだよ」
「へー。男ニガテな割にはいっちょまえにお世辞言えるんじゃねーか」
いや、お世辞じゃないんですけど。かと言って、彼が謙遜しているようにも見えなかった。カッコいいっていう自覚がないのかも……?
すると彼は突然。
「なあ花菜、この後、ふたりで飲み直さないか?」
「え?」