幕末を駆けた桜
……と、心の中で思ったどうでもいい事は放置するとして。
このような会議の場で、堂々と幼稚な言い合いを始めることができる2人のプライドの低さに、心の底から僕は感心するよ。
『……チッ…』
『真白君…』
舌打ちをした土方さんは無視するとして、僕の目を見て肩を縮ませた沖田は…あれだな。
飼い主に叱られた犬。
勿論、ゴールデンレトリバーみたいな大きい優しい犬。
優しくはないが、見た目はまぁ…そんな感じだ。
『坂本会うために同伴が必要ならば、2人ついてこればいいだろう?
わざわざ喧嘩する意味が分からん』
吐き出すようにしてそう言った僕の言葉に、何故か土方と沖田は顔を見合わせて、ニヤリと口角を上げた。
『そうかそうか…お前は、俺達2人が付いていた方が良いってわけだな?』
『そうなら早く言ってよ。ね、土方さん』
ニコニコと、まるでさっきまでの喧嘩が嘘だったかのような笑みを浮かべてそう話す2人を見て、組長方が僕に哀れみの視線を向けた。
…その視線を向けられるって事は、演技だったって訳ですか。
まぁ、騙されたのは気にくわないが、それ程…坂本と会いたかったのだろう。