幕末を駆けた桜


『……入るぞ、土方』


『ちょっ、待て‼︎ 今は取り込み中…で……!』


一応礼儀として土方の部屋に入る前に一声かけて、如何してか慌てる土方の声色を不思議に思って襖を開ける。


そして、固まった。


土方は土方で、額に手を当てて溜息をついている。



土方の部屋にいた後1人の人物は……



『あら、貴方が神楽真白さん?』


吐き気がするような甘い声でそう言った人物こそ、伊東甲子太郎だった。



……まさかの伊東甲子太郎オネエ。
いや、オネエなんて可愛いもんじゃないな、こいつは。


『私、貴方みたいな人好きよ。
土方さんも格好いいけどね』


僕を探るように目を細めた伊東甲子太郎の言葉に、分かりやすく顔をしかめる。

なんなんだ今のセリフは。
気持ちの悪い。


土方も土方で少し引いたのか、伊東甲子太郎から距離をとった。


……なんだこいつ。
やりにくいったらありゃしねえ。


まさかの事態に顔がひきつるのを感じながら、笑顔を貼り付けて自己紹介をする。



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