幕末を駆けた桜


そう言って笑うと、勢いよく頭を下げて来た京に、笑みを深めて頭を上げさせる。


『明日の戦、武功を挙げられる様に頑張れ』

『勿論。期待に添えてやりますよ。真白中将』


何を思ったのか、ニヤリと笑ってワザといつもは使わない敬語と中将呼びでそう言った京に顔をしかめると、そんな僕を見て京が苦笑いを浮かべた。


『真白中将に敬語と中将呼びしないと、城間少将が怖いんですから仕方ないだ…です』


また城間さ…じゃなくて、城間か。

あの人はいつからそんなに僕に忠誠を誓う様になったんだろうか。

……あれ、若干結構前からそんな兆しがなかった気もしない。


新撰組だった時代も、名前貰ったあたりから沖田の言うことより僕の指示に従っていた様な…?


指示っていうか、我儘っていうか。


……まぁ、いいか。そんな事はどうでも良い。


『あ、それと、真白中将明日の戦参戦するんですよね?』


『ああ。そうだが。
……何故そんなに広まっている?』



待てよ。
僕が明日の戦に参戦すると言ったのは今日だ。
それも、数刻前。
そんなに時間も経って居ないはずなのに、何故こんなに広まっている。


『元帥方が大騒ぎしてましたからね』


元帥……ああ、近藤さん達か。
大騒ぎって、ここに聞こえるくらいの声量でなんて勘弁してくれ。

『戦に参戦するだけだ。

それに、僕は中将だと言うのに、何をそんなに騒ぐ必要があるのか謎だ』

『まぁ、皆さん心配なんですよ』


眉間にシワを寄せてそう言った僕に、今度は苦笑いじゃない笑みを浮かべた京がそう返す。

『……心配? 今更な気がするが』

『心配に、今更も何もないだろ。
特に、坂本さんや沖田さん辺りなんかは』



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