俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集


こんなモールの片隅で。
必死になって女の機嫌をとるなんて、こんな情けなくて、みっともない姿、ほんの少しの前には想像もしなかった。

でも、それが今の俺で。
杏を失うことに比べたらそんな姿をどう現そうと、どうでもいいとさえ思ってしまう。

俺の言った一言で、杏の動きが止まる。
今のうちにと杏の肩を抱き寄せて、頭を胸に押し付けた。

俺の腕の中に囲い込まれた杏が再び暴れだしたけど、知ったもんか。

「ね、ねぇったら。何してんの?恭一、行こうよ、さっきからどうしたの?」

なおも煩い弥生さんに顔だけ向き合って、とりあえずお帰りいただくことにした。

「弥生さん。さっき言ったことは忘れてください。俺、彼女にベタ惚れなんですよ。
でも俺の彼女けっこうツンデレで。
弥生さんの事はどうでもいいけど、そうやって言ったらやきもちやいてくれるかなーとか思っただけなんで。
こんな可愛い杏の顔が見れたらもう充分。
もうあんたと話す必要もないから」

ワンコの顔に笑顔を張り付けて、もう用は無いんだと言い放つ。

その台詞に腕の中で大人しくなった杏の頭を優しく撫でながら、唇を噛んでわなわなと震える弥生さんを冷たく見つめ、これで終わりだと最後の台詞を言いかけたその時、これまた面倒臭い奴が現れた。

「あっれーーー。恭一じゃない。
何してんの?微妙に注目浴びてるわよ?
えっ?あれ?杏ちゃん?
ちょっ、こんなところで何盛ってのんよ!
恥ずかしい奴ね!」

そう言って、腕の中にいた杏をひっぱって、キヨが杏の腕を組む。

杏は突然のキヨの登場に目を丸くして、でも俺の腕から抜け出せて、助かったと言わんばかりに息を吐いていた。

「キヨさん、偶然ですね。ありがとうございます」

「今日は朝からだったから、18時までだったの。本当偶然!」

えっ!?
もうそんな時間?
まじかよ。

「どうしたの?ほんっと、ろくなことしないんだから。もう大丈夫だからね。
さっ、あんなやつほっといて私とご飯でも行きましょう?」

杏に対して嬉しそうに笑顔を浮かべて、さらりと俺の毒を吐くのはやめてほしい。

彼氏が彼女を抱き締めて、何が悪い!
━━━まぁ、場所は悪いけど。
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