ちょう


文章が、という意味ではなくて。ひとの汚い所もきちんと書いていて。本心と異なった言葉は嫌いだけれど、中々それが成り立たないことも、私はちゃんと分かってはいる。


────『突然のメッセージすみません。ちょっとお話ししてみたいと思って、作品を読ませていただいて思ったので、メッセ送ってしまいました』

────『わざわざ読んで下さったのですね! ありがとうございます。お話ですか……何か訊きたいことでもあるのでしょうか。何でも聞いていただいて構いませんよー!』

────『あ、内容とか特に考えてませんでした……』

────『そうなんですね、……じゃあとりあえず自己紹介でもしてみますね!』


唐突だな、と思いつつ、自分が話題を用意していなかったせいなのでその先の文章を読んでいく。ぽんぽん、と交わせる会話は相手も今は時間があるということなのだろう。


────『一応名前は桜です、桜って呼んでください。物書き歴はかれこれ……ええと、ちゃんと書き始めてからは七年目になりますかね? 現在二十歳の看護学生です』


へえ、看護学生。二十歳ということは、二年生だろうか。この時期なら半分以上の確率で誕生日は来ているはずだ。


だって、明日から十二月が始まる十一月最終日、三十日の深夜一時。今年度も、あと丸四ヶ月で終わりを迎える。


そうしたら私も高校三年生になるのか、と思って憂鬱になる。大学受験はしろ、と言われるだろう。私自身どうしたいのか決まっていないから、それを突っぱねるのも労力を使う。


早くなりたい職を決めれば楽だろうに、と思ってはいても、中々見つからないものだ。焦らなくてもいいのかもしれないけれど、出来れば人と関わらない職がいいなあ、と思う。


私からしたら、看護師なんてなりたくない職業ナンバーワンだ。人の本心が見えないということはとても幸せなことで、どうしても羨ましいと思ってしまう。


私だって、親の、友達の、先生方の汚いところなんて見たくなかった。


────『看護師なんて、凄いですね。私にはできないなあ……どうして、なろうと思ったんですか? なんて、初対面のようなものなのにすみません』

────『謝らなくていいですよ。私が看護師になりたかった理由ですか……面接の答えみたいなやつなら簡単ですけど、正直なところ、一番分かりやすい答えは「成人前夜の独り言」を読んでいただけると』


成人前夜の独り言。


私が読んでいたサイトにあっただろうか、と思いながらページを開くが、案の定ない。仕方なく小説サイトではなく全体でタイトルの検索をかけると、他の携帯小説サイトで同じ名前の作品を見つける。ページ数はそう多くはない、さっくりよめるだろうかと『小説を読む』をクリックした私は、文に目を走らせる。


感想を一言で言うと、なんだこれ、だった。


飲み込まれる。感情の渦に。綺麗とか汚いとか、そういうのすらないと言いたくなるような。


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