別れるための28日の蜜日
「百合、ここのチーズスフレ好きでしょ」

なんだかんだ、結局、香苗は私に甘い。忙しくて平日に聞けない話をする機会を作ってくれてるんだ。ホントに悩んだ時には1人で突っ走る私の性格も分かった上で。


「ありがと。コーヒー入れるね」


コーヒーと大好きなケーキに癒されて、私はポツポツと話し出した。

「律人にはまだ何にも言ってないの。律人が傷付かずに、引きずらずに別れられるなら、どんな方法でもいいと思ってる」

「自然消滅狙うの?稲垣君は大人しくフェードアウトはさせてくれないと思うけど?」

「うん。でもなるべく早く前を向い向いてほしいから」

「稲垣君が前を向けたとして、百合は?大丈夫なの?ちゃんと前を向けるの?」

「分かんないけど、でもそれでも別れようって決めたのは私だから」

お互い握ったコーヒーカップを見つめたまま、淡々と話す。
感情を出してしまったら、きっと話せなくなるから。
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