別れるための28日の蜜日
「おはよう」

いつも通りのテンションでエントランスを進む香苗に並んで進む。

チラリっとこちらを見ても何も言わず、前を向き直ったままどうって事ない世間話を話し出す香苗は、私から話し出すまでは何も聞かないつもりなんだろう。

「ありがと、ね」

その心遣いがありがたくて思わずボソッと言った言葉も聞き逃してくれた。




幸せでもツラくても、プライベートに関係なく仕事は待ってくれない。本格的な忙しさはこれからだとしても、忙しさの前触れみたいなものはジワジワ来ている。

律人の帰宅時間は分からないけど、夕飯を作るなら買い物もしたいし、その分も考えて、定時退社を目指したい。
気を抜いて仕事していては間に合わなくなる。

「山内さんは今日もマジメだね」

「なるべくなら定時に帰りたいと思って。だから、急な頼み事はだめですよ?」

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