別れるための28日の蜜日
「なるほど。って事は彼氏さんはうちの社員か元社員って事だね」

町田さんの名前を出して納得させようとしてるんだから、当然の推理だ。ここまできて誤魔化す必要もないだろうと、頷いた。

「すいません」

「だから、僕にあやまっても意味ないって。いいよ、引き受ける。実質、名前貸すだけだし」

座席の背もたれに体を預けて上を向いた町田さんが、ポツリと呟いた。

「なんだかんだ言って、山内さんって損な性格だよね。要領悪いっていうかさ」

「そうかもしれないですね。仕事も色々まわされちゃってますし」

冷めてしまったコーヒーのカップを両手で包んで答えると、「違うよ」とため息をつかれた。

なんか、さっきからずっと町田さんにため息吐かれてるなぁ。

「自分のためって言ってるくせに、結局彼氏さんのために別れようとしてるでしょ?好きなくせに、自分ばっかり悪者になって」

「仕方ないですよ」

やっぱり口癖になってる言葉に苦笑した。
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