別れるための28日の蜜日
「稲垣さんに渡しておきますね」

俯いてるけど、ちゃんと笑顔で言えてるはず。感情を出すのはもう少し後だ。

「お願いします」

ぺこりとアタマを下げた相沢さんが、窺うように私に問いかけて来た。

「あのー、その、ちょっとおうかがいしたいんですけれど。律人さんはどんなタイプの女性がお好きかご存知ですか?」

頬を染めて恥ずかしそうに問う姿は女の私から見ても可憐で可愛い。

「‥‥稲垣さんの事、お好きなんですか?」

自分でも驚くくらい冷静な声が出た。

ビックリしたように目を見開いてから、更に顔を赤くしてコクンとうなずく姿も本当に可愛くて、男性なら誰でも惚れてしまうだろう。

「私の気持ちを知って、父から縁談を申し込む話しもあるのですが、相沢の娘ではなくて私個人を好きになっていただきたくて」

家柄も容姿も性格も素晴らしいって、卑怯だ、と思った。こっちは何にも持ってなくて、好きだという気持ちだけしかもってないっていうのに。
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