偽りの翼Ⅱ




花恋の手を握る俺のもとに女の先生が近寄ってきた









「お父さん、今彼女は危険な状態です。体力の消耗も激しく……最悪の場合、」







俺は、その先に続く言葉を






「死に至るかもしれません」







聞きたくなかった。





「嘘ですよね?花恋は…死んだりなんかしませんよ」





今、花恋は生きている。





俺の手を握っている






確かに汗ばんでいて苦しそうだけど…





「…赤、ちゃん………をた、すけて」





そのとき花恋は言った





赤ちゃんを助けて、と。





「これ以上やると母子ともに危険です。帝王切開に切り替えましょう」





「だいじょ、ぶ…で…す」





まだ頑張れると言った様子で言う花恋






もうきっと感覚なんてなくて。






全てが麻痺しているのかもしれない。










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