甘々なボスに、とろけそうです。


「心外だなぁ。僕ほどの男に話を聞いて貰うって、そういうことだよ。でも、君は金持ってなさそうだから、まけといてあげる」


人みて料金変えるとか、ブラックジャック先生ですか。


「……結構です」


「悩みの種は、例のオッサンとのこと?」


そういえば私は、この人に大きな勘違いをされたままだった。


「あなた、誤解してますが、私は――」


「新條要」


「……っ、新條さん、誤解です。私は、よこしまな考えでこのビルにいるわけじゃないですから」


「へぇ」


「オジサンに取り入っているわけでも、ないです!」


「そうなんだ」


ニヤリと薄笑いしながら、そう答える新條さん。信じていなさそう。


「立ち話もなんだし、どこか入らない?」


(……どこかって?)


ウィルくんが帰った今、私は手持ち無沙汰だ。ボスやサナエさんのお手伝いをさせてもらおうか。でも、忙しいところに行けば、かえって邪魔になるかもしれないし……大人しくしているべきか。

いずれにせよ、新條さん過ごすという選択肢は、私にはない。このまま、今夜の食事会まで1人で時間を潰すか、会社に戻ってできることをするかの2択だ。その判断は、ボスに仰げれば1番いい。


「あれ? 新條さん」


この声……


「君はたしか……」


新條さんが、視線を私の背後にうつす。


「猫垣です。28階の」


やってきたのは、

(お……お、)


「みこ、新條さんと知り合い?」


(お兄ちゃん…!!)


兄が……、会社に戻ってきた。

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