CHEEKY X'MAS―愛しの生意気エイティーン―
と、彼と同じグレーの制服の男の子が彼に声を掛けてきた。
彼の同級生らしい。
短い会話の後、同級生くんはおもむろに、わたしに目を向けた。
この人は誰、と。
彼が完全無欠の笑顔をつくる。
「ぼくの彼女」
何回目かの、同じシーン。
相手のリアクションも、だいたい同じ。
なるほど納得、って。
おまえ大人びてるから年上の女性がちょうどいいんだろうな、って。
あのね、うなずいてみせてるけど本当は、わたしは笑いをこらえてる。
きみ、気付いてないわよね?
冷静沈着で頭脳明晰、いつも澄ました顔をしてる彼は、実はずいぶん子どもっぽい。
だって、この本屋を待ち合わせ場所にする理由、目撃してもらいたいからでしょ?
わたしと一緒にいるところを、同じ学校の人たちから。
と、うがったことを言っても、きっと彼はうなずかない。
このお店はわたしの仕事場からも近いからとか。
意外と本好きな2人が時間つぶしできる場所だからとか。
もっともらしい理由を並べて、はぐらかす。
そういうことにしておいてあげる。
じゃないと、すぐ、すねちゃうし。