私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
部屋に戻って、すぐに光二にコーヒーを持って行く約束をしていることを思い出した。
しまったと思うが、リビングに戻るのもなんだか気まずい。
廊下でうろうろしていると「どうした?」と背後から光二の声が聞こえた。
「あ、あの……すいません。コーヒー持ってくるのを忘れてしまって」
「おおかた、源に変なことを言われたんだろう。気にするな」
彼のキャラクターをしっかりと分かっているのか、光二はあまり怒っていなかった。
「あの、光二さん」
「なんだ?」
「……」
「源之助があまりにひどいなら、裁判たてて弁護人になってやるぞ」
にやりと笑って言う光二。
「いえいえ!そんなことをしてほしいわけでは……!」
「冗談だ」
真面目な表情で冗談言うのはやめてほしい。
特に光二のようなタイプは冗談を言っているのかどうかが非常に分かりにくい。
「……」
「あまり深く考える必要はないと思う」
「へ?」
「あいつは、欲しいと思ったものを必ず手に入れる男だ。だから、いくらこちらが必死に考えたところで、あいつが望めば結果は変わらん」
「そんなの理不尽です」
「世の中理不尽なことばかりだぞ」
静かに諭されてあずさは唇をきつく結ぶ。
そんなの分かっている。
家が燃えた時も、助けてくれたのは源之助だけだった。
誰も本当は助けてなんかくれなかった。
「……」
「静かに身を預けてみろ。あの男は嘘をつくような男ではない」
時々、意味不明な持論は展開するというデメリットはあるがな。
と余計な一言を付け加えて、光二はコーヒーをリビングまで取りに行った。
コーヒーを忘れたうえに、話まで聞いてもらってあずさは少しばかりいたたまれない気持ちになった。