私の家は52F!?〜イケメン達と秘密のシェアハウス〜
「で、結局見つかったか?」
享が吉伸に会場で質問するも、吉伸は肩をすくめて首を横に振る。
「全然、いないね。家にも戻ってみたけど戻った気配はなさそうだし。警備室の田中さんによればビルを出ていったきり戻ってきてはいないらしいし、警備室の監視カメラにも戻った様子は写っていなかったみたい」
「出ていったのか……?」
心配そうな表情を浮かべながら、享は言う。
口では何だかんだ言いながら、親友である源之助のことを一番に考えている男だ。
「まさか。住むところなんかすぐには見つからないでしょ」
「……考えすぎか」
「考え過ぎとは言わないけど、やっかいなことには巻き込まれてないといいなとは思うけどな」
「……まさか。光之助さんに?」
「そっちじゃなければいいなと思うけど、濃厚だなと思い始めてきたよ」
「光二は?」
「今、調べてもらってる。知り合いの探偵がいるらしいから」
「弁護士って探偵と知り合いになれる職業だっけ?」
「色々とツテがあるんだろ。どういうルートか知らないけど」
ヒソヒソと話をしていると、吉伸のところに有名な女優が姿を現し声をかけた。
「あの……YOUTUBEで動画出されている方ですよね?大ファンなんです」
「ありがとうございます。僕もあなたの出ている映画何度も見ていますよ」
「よろしかったら、写真でも」
「喜んで」
こんな時に、美人さんと写真なんか撮っている場合じゃないだろと思いつつも享は友人と女優のツーショットを撮る。
友人の場合、こういうステータスが彼の収入に繋がるのだ。
どうせ、このパーティーに参加したのも彼の収入の一つになるからに過ぎない。
それが悪いことだとも思わないが、友人の恋人が行方不明になっているという事実を考えると少しばかりやるせない気持ちになる。
源之助の挨拶が終わると、彼の傍にはたくさんの人が集まっていた。
身動きが取れない彼のために、俺らがいるのだ。
去って行った女優に手を振っている吉伸に、享は「そろそろいいだろ」と声をかける。
「ありがとう。これで軽く100万アクセスだな」
「……俺には出来ない仕事だよ」
「だろうな。俺もお前の仕事無理」
にやりと笑って言う友人のスマートフォンに光二から連絡が入った。
「光二からか?」
「どうやら、ここの会場にいるお嬢さんが悪さを働いたらしいよ」
「お嬢さん?」
「ちょっと厄介な相手だね」
うーんと唸った後、吉伸は一人の女性を顎で示した。
「うわ……厄介」
指した先にいたのは、別所麗華。
松平財閥と対等に張り合うことが出来る、唯一の財閥。
彼女は生きているのだろうか。
「これは源之助の力を借りないと無理だね」
「そうだな」
二人はたくさんの人の中にいる自分の親友に目を向け、再び頷いた。