男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

◇◇◇

ひと月後、今日はいよいよ剣術大会。

出場者は百人に上るので、試合は早朝からのスタートということだ。

自室で支度を整えた私は、鏡に自分の姿を映して「よし」と頷く。

そこにドアがノックされて、ジャコブが入ってきた。


「ステファン様、お支度は整いましたか?」

「うん」


着ている服は襟がUの字に開いた、頭からスッポリと被るタイプの上衣と、黒のピッタリしたズボン。ウエストは黒の細い布帯で締めている。

ヒラヒラしたブラウスは剣の動きを鈍らせるので、戦いに向いたこの服を、この前、城下街で買ってきた。

ここに来てひと月以上が経つから、私の行動制限は解除され、今はどこへ出かけても許される。

ただし、お供をつけての行動で、あらかじめ行き先と時間、そこへのルートなどを、大公殿下に申請しなければならないが。


晴れて解禁となっても、私はこの服を買いに行ったとき以外、街に下りていない。

そんな暇はない。今日の日に備えて、授業以外のほとんどの時間を、剣の稽古に当てていたのだから。


試合は木刀で行うので、愛剣は部屋に置いていく。

「行ってくるね」とジャコブに緊張した顔を向ければ、クスリと笑われた。


「行ってらっしゃいませ。勝たなくていいので、怪我だけはなさいませんように」


「勝つよ! 絶対に優勝するんだから!」


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