『コーン』な上司と恋なんて
下から名前を呼ばれて振り返った。
黒のワゴン車に側にいる課長が私の方を見てる。


「何ですかぁ?」


私はこれから御神籤を引いてお守りも買いたいのに…と気が削がれながら返事した。

課長は既にワンコを車の中に入れ、後部座席のドアを閉めるところだ。


「………?」


課長は声をかけたままこっちには来ない。
となれば、私が課長の所まで行くべきだろうか。


(えー、でも今日はプライベートでここに来てるんだし、呼ばれたからと言って行く必要はないような……)


階段を下りるのも面倒で境内の上から課長のことを見ていた。

すると課長は車の側を離れ、スタスタと小走りに階段を駆け上がってくる。

まさかそんな行動に出るとは思わず、(えっ!?)と目を疑った。



「……君、これから昼ご飯だろう?」


境内に続く階段を駆け上がってきた課長は、軽く息を切らしてる。
やっぱり私が降りるべきだったのだろうかと後悔しつつ頷いた。


「じゃあ一緒に食べよう。この近くに美味しい店があるんだ。こんな場所で会ったのも何かの縁だし丁度いい」


「えっ、あの、でも……」


こっちはそんなの縁だとも思ってないし、そもそもどうして私が課長と食事をしないといけないんですかぁ?って気分なんだけど。


「す、すみませんけど私、今から御神籤引いてお守り買おうかなと思ってたところで…」


だから食事は辞退します…という意味で言ったんだけど。


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