『コーン』な上司と恋なんて
目線を向けると課長とワンコが歩いてくる。



「…休憩か?」


課長の声に頷き、「お先にどうぞ」と手の平を振った。


「じゃあ」


課長はワンコのリードをキュッと握り、私の前をすり抜けて行く。

老犬と称されたワンコもその歩調に合わせて上る。

フサフサの尻尾は垂れ下がり、あまり元気が良さそうには見えないけど。



(まるで狐みたいだなぁ)


尻尾を見ながらそう思った。
このワンコが狐だとしたら、間違いなく神様のお使いだと思えるんだけど。


(違うけど願っておくか)


フサフサの尻尾を見つめながら再度お願いします…と祈りながら階段を上り始めた。

意外にもそのあと直ぐに鳥居は切れて、境内に辿り着いた。


「あーやれやれ」


砂利の敷かれた境内を歩きながら息を吐く。

課長とワンコは境内の下にある駐車場の方面へ向かってる。



(もう帰るんだ)


そうだよね。実家が近いとか言ってたしね。


つまらないなぁとか思ってしまった。

1人で来るには神社って場所はやはり寂しいものがある。



「そうだ。御神籤を弾くんだった!」


思い出して社務所の方へ目を向けた。
丁度いい具合に参拝者も少なくて買い易そうだ。


(お守りも買っちゃう?稲荷神社だけど縁結びのやつ)


バカだなぁ…と思いながら行こうとした。
大鳥居の前を通り、参道を横切ったら。



「おーい。芦原さん!」



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