『コーン』な上司と恋なんて
半泣きだった悠生の目が見開き、「しゅごい!」と声を上げた。


「今度は『おかわり』と言ってみて」


広幸さんの言う通りに「おかわり!」と叫ぶ悠生。
ワンコは一瞬ビクッと耳を揺らしたけど、言う通りに左前脚を掌の上に乗せた。


「おりこうさんだ〜〜!」


ぎゅっ…とジョイ君に抱き付いて、ヨシヨシと身体をさする。
ジョイ君はジョイ君で、まるで子犬を舐めるかのように悠生の耳を舐め続けた。


その一件ですっかり広幸さんにも懐いてくれて、お陰で今では私よりも彼と遊びたがるようになった。

悠生にお菓子作りをせがまれなくなって、私としては少し寂しいけれどいい。



(…だって、もう直ぐ新しい遊び相手が生まれるしね)


撫で撫で…と、膨らみだしたお腹をさする。
広幸さんとのベビーは、後5ヶ月ほどで生まれてくる予定だ。


(来月には腹帯を頂きに行くんだなぁ)


広幸さんの地元にある「稲荷神社」で、安産のお祓いを受ける予定にしてる。
「戌の日」にあやかって、彼と偶然出会ったあの場所を選んだ。


「その時こそは早起きをしなくちゃ!」


結婚後、専業主婦になってからの私は、早起きがまるで出来なくなった。

広幸さんを支えるどころか、朝もギリギリまで寝てるのが習慣だ。


今は妊娠してるから…と、彼も多めに見てくれる。
その機嫌の良さが、いつまで続くかは謎だけど。



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