『コーン』な上司と恋なんて
しどろもどろと言い訳する私に、「どうぞ」と言いながらお社の前を空けてくれる。


「ど、どうも」


折角空けてくれたんだから…と近づく。

課長が供えたのかどうかは知らないけど、神棚には黄金色に揚がった三角形の油揚げが供えられてる。

近寄ってきた私に興味を示すワンコが、フンフン…とニオイを嗅ぐ。
さすがに大きいから少しだけ構えた。


「こら、ジョン。失礼だぞ」


リードを短く握り直した課長の側にきちんと前足を揃えて座った。
賢そうな顔を見てると自分の方がおバカに見えてきてしまう。


「ごめんね。ちょっと祈願させてね」


ワンコと課長の前を通って社殿の前に寄った。
本殿から外れた場所にあるけど、きちんと掃除はされてるみたい。

課長がこっちを見てると思うと緊張するけど、とにかくお願いだけはしておこう。


チャリン…と小銭を賽銭箱の中に投入し、パンパン!と柏手を打った。


(どうかお願いします。素敵な彼氏と巡り会えますように)


項垂れて願うこと数秒間。
課長とワンコが去る雰囲気はなく、めっちゃ祈り難いな…と思いつつ祈願を終えた。

チラッと目を前に向けると、陶器で作られた狐の像は目が鋭く吊り上がってて怖い。

真っ白な体に赤く縁取られた唇が不気味にも見えるし、咥えてる巻物も玉も意味深過ぎて謎めいてる。

神様の化身だから神々しいんだと思いたくても、やっぱり何処かおっかない雰囲気が漂ってる。


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