目を閉じてください
「…あいつはお前の何だ」
「……あいつ???」
もちろん会計も個室で行われる。料金を書いた紙を、高級そうな革製の2つ折り伝票挟みで出す。
テレビの高級レストランでしか見たことない物だ。
支払いはカードだった。
見たこともないブラックの。
お金持ちしか持てないと噂の。
そういうことは知っていた。
本物のお金持ちだ。
「エレベーターの男だ」
なぜか、ムッとしたまま言い放つ。
「いや、えっと、先輩で。職場の」
「仲いいのか」
「仲、…いいというか、会ったばかりで指導係で、たまたま一緒になっただけで婚約者さんもいらっしゃいますし」
「そんなことはどうでもいい。あいつとは喋るな。いや、他の男とは喋るな」
「そんな無茶な」
言いながらも。
なんだろう。嬉しい。
「とにかくそういうことだ。明日また来る」