不審メールが繋げた想い

安全は確認したい。心配したらきりがない。

【真さん、大丈夫ですか?連絡が出来ない状況だったのでしょ?来られなくなったのですね?】

一応、メールはしてみた。


着信!メールが来た。はぁ…、真さんだ。…もう…やっと来た。

【ごめん、行けなくなったんだ。だけど母親の手前、行ってた事にしておいて欲しい。本当、ごめん。こんなに連絡が遅くなってごめん。荷物、届いたんだね。開けていいから。詩織、ごめん】

あ。…はぁ…無事ならいい、…それでいい、…良かった。…もう夜だ…。来ないって…。散々待たせた挙げ句に……もう来ないんだよね…。

嵌めていた指輪を見た。ゆっくり抜き取り、引き出しにしまった。はぁ。義理は果たしました…終わっちゃいましたね、二人で過ごすはずだったクリスマス…。何だかよく解らないけど、こんな日だからって、本当は始めから無理しようとしたのかも知れない…。

冷蔵庫の中から箱を出してみた。…特にする事もない。来ないと言うのだから開けてみよう…。
よいしょっと。よく冷えたな…要冷蔵、天地無用、取り扱い注意。ベタベタと注意するシールだらけ…。バリバリと梱包してあるテープを勢いよく剥がした。
あ、……中はクリスマスケーキ、下は…豪華なオードブル。これを一つの箱に。…はぁ。高さのある大きな箱になる訳だ。何も用意して無いって言ってしまったから…一緒に食べるつもりでだったのかな…。だったら…。何よこれ……食べられなかったじゃない…。はぁ。
もう一つの箱を開けた。綺麗にラッピングされていた。…こっちはマフラーと手袋。…プレゼントだ。
…これって…、来ない事、前提の、だよね。…解ってたんだ。明日になって届いたとか、そんなんじゃないじゃん。来ない事はもう決まっていた…。じゃあ、どうして?その時連絡をしてくれなかったんだろう。行くって言ってた手前、先に言ってしまうとがっかりさせてしまうから?…。それとも来るっていうのは元々嘘で、行くって言って、それだけでも喜ばせようとしただけ?それでドタキャンすればいいって。解らないものね私には…。
よん所ない仕事の都合?…芸能人だもの、不意の誘いがあったかも知れない。断れない誘いとか。日が日だものね。それとも……、今まで連絡が出来ないくらいの余程のコトがずっとあった…?今日の事は元々…本当は居る、厳重に内密にしている本命と過ごす為の…アリバイ工作の為だった?…。
…結婚とか、クリスマスとか…、本当の本当のところは…私は最初から便利に利用されてるだけ?……黒い。全く黒い…私の心。これでは爛れて行きそうですよ真さん…。もう、解らない…全然解らないですよ?
そっちに行くよ…何も要らない…、居てくれるだけでいい、とか、……そんな事、初めから言わなければいいのに…。無理なら言わなければいいのよ。…どうして?

【プレゼント、有難うございました】

…これだけでもいいよね。…あ、フ、…フフ。はぁ。何…これ…。何だか解らない、訳の解らない涙がポロポロ零れてきた。ハハ、だから期待なんてするもんじゃない。もういい…寝てやる。もう寝てもいいよね。
自分で自分を追い込んでしまった。本当の理由なんて解らないのに馬鹿だ。想像して勝手に拗ねなくてもいいのに…本当に私は馬鹿だ。情けない。だから…こういう訳の解らない事、駄目なのよ。振りとか、そんなのは駄目って…。
こうなったとき、凄く虚しいじゃない…。自分に腹が立つ。

ピンポン。
え?……はぁ。フ…笑っちゃう…。はぁぁ、今、各務さんかもって思ってしまった。そんな筈はないって解ってるのに。何だか各務さんは、いつも救世主だから…。はぁ、もう、…誰よ。こんな日に。それこそ部屋を間違えてるでしょ…。酔ってるのかも知れないわね。彼とか、彼女の部屋なら、うちじゃないですよ?…お願い、間違えたりしないで。他人とはいえ、浮かれた顔なんて見たくないの。訳の解らない八つ当たり、されたくないでしょ?確認するのも出るのも煩わしいのよ…。

ピンポン。ピンポン。
はぁぁ…煩いな……出なきゃ駄目?…。

ピンポン。
……中々頑張るわね。明かりは点いていない。出なくても解りはしない。こんな時間に非常識よ。

ピンポン。
…もう、しつこい!…誰よ。 いい加減に…。
RRRR…RRRR…。……え。
あ。

「…は、い」

「贈り物、受け取りに来ましたよ」

「…各務さん」

「こんな時間だけど、開けて貰っても?」

あ、各務さん…。各務さん。

ドカドカと玄関に走った。カチャ。

「各務さんっ!」

「おっと!どうしました?…詩織さん…お願いがあります。珈琲を一杯、ご馳走してください。それから…少し疲れました。仮眠を一時間程、取らせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「ががみ゙ざん゙…」

「…はぁ、…どうしました?…泣いたりして…すみません。遅い時間ですから怖かったのですか?。…構いませんか?取り敢えず入りますよ?」

頷いた。
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