夢幻の騎士と片翼の王女
「では、明日もたのんだぞ。」

俺はそう言って、金貨を手渡した。



「こ、こんなに…いけません!多すぎます!」

「こんな無茶、なかなか聞いてはもらえない。
取っといてくれ。」

最初は遠慮していたが、結局、彼は金を受け取ってくれた。



馬鹿なことをしているのかもしれない。
こんなことくらいで、亜里沙の気持ちが晴れるとも限らない。



だが、彼女のために、どうしてもなにかしてやりたかったのだ。



(こんなこと、ただの自己満足かもしれないのに…)



それだけじゃない。
亜里沙は、アドルフの側室になる女だ。
俺には何の関係もない…
いくら、温情を持ってしても、俺のものになる女じゃない。



(……馬鹿馬鹿しい!)



やめよう…
明日からは、こんな馬鹿なことはやめてしまおう…



そう思うのに…
俺にはやめられる自信がなかった。



亜里沙はあんなに切羽詰まった声を出してたんだ。
理由はわからないが、きっと、とても辛い状況なんだろう。
それを知ってしまった以上、それを無視することなんて出来ない。



(そんなの当然のことだよな…
俺は、亜里沙に特別な思いがあるわけじゃない…
そうだ…ただ、可哀想な女を見過ごせないだけだ。)



俺は自分に言い聞かせるように、そんなことを考えた。
< 144 / 277 >

この作品をシェア

pagetop