夢幻の騎士と片翼の王女
なんだろう…
突然のことにびっくりはしたけど、なんだか安心出来るような気もする…



(あ……)



今建物の影からちらりと見えた長い金髪の方は…もしかしたら、リュシアン様…?



「あ、すまない。」

「い、いえ…」

アドルフ様が体を離され、照れくさそうに微笑まれた。



「下りて来るのに疲れただろう?」

「い、いえ…」

「とにかく、部屋で休むと良い。」

「はい、ありがとうございます。」



本当にアドルフ様はいつもお優しい。
アドルフ様はその後も私達に着いてこられた。



「しばらくは城に住んでもらうことになるが、我慢してくれ。」

「我慢だなんてそんな…」

あの塔に比べたら、どこだって快適だと思う。
まさか、今度は鍵なんてかけられないだろうし…



「昼食は一緒に食べて構わないか?」

「え?も、もちろんです。」



ちょっと緊張はするけれど、いやって思う理由はない。
それに、わざわざ迎えにまで来て下さったことにはちょっと感激かも。
なんだか、すっごく大切にしてもらえてる気がして嬉しいな…



(あ…でも、もしかしたら、今夜から…)



ついに、マリエッタさんに教わったことを実践する時が来たのかと思ったら、嬉しかった気持ちが急に沈んでいくのを感じた。
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