夢幻の騎士と片翼の王女




「すっごく甘くておいしいです!」

「そうか、それは良かった。」

大粒のブドウを頬張りながら、亜里沙は微笑んだ。



特に目新しいものなどないが、新鮮な空気と広い空、優しい風が俺たちを穏やかな気分にしてくれた。
山の中を散策したり、麓の畑で果物を取って食べたり…
そんな、ごくありふれた毎日が、俺は幸せでたまらなかった。



そう…
俺は、亜里沙と一緒なら、どこにいても幸せなんだ。
一緒にいられることが、なぜだか不思議なことのように思える。



考えてみれば、亜里沙と初めて会ったあの日も酷く不思議な想いを感じたものだ。
あの日、俺は今までに感じたことのない、激しい何かを感じた。
俺の女になるはずが、そうはならず…亜里沙は連れ去られてしまった。
悶々とした想いを抱えながらのこの数年間…
短かったようでやはり長い日々だった。



しかし、それももうすぐ終わる…



今度こそ、亜里沙は俺のものになるのだ。
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