夢幻の騎士と片翼の王女
「やっぱり、ここは気持ちが良いな!」

頂上に辿り着き、私達はそこに設えられたベンチに腰を下ろした。



「亜里沙、疲れなかったか?」

「はい、大丈夫です。」

「そうか…」

目と目が合った瞬間、リュシアン様が視線を逸らされた。



やっぱり言いにくいことなんだと思った。
きっと、私の推測は合っている…



でも…意外と心は落ち着いていた。
贅沢な生活に慣れたとはいえ、私は庶民の生活に戻る自信はあったから。
短い間だったけど、花屋さんで働きながら暮らしてたこともあったし…



ただ、ちょっとだけ怖いのは…まさかとは思うけど、尼寺に行けと言われたら…
それはやっぱりショックだけど…
昔の偉い人の奥さんは、旦那さんが亡くなった後、尼寺に行かされることがあったって話を急に思い出した。
あ…ここは日本じゃないから、尼寺っていうより修道院みたいな所かな。



でも、たとえそういうことになったとしても、それは仕方のないことだ。
心配は心配だけど、意外とそういう状況になったら、落ち着いた生活が出来るのかもしれない。
元の世界に戻れないことも、アドルフ様が私のせいで亡くなられたことも…神様にお仕えしたら、もしかしたら、今より心は軽くなれるのかもしれない。



(勝手なこと考えてるな…私…)


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