夢幻の騎士と片翼の王女




「何も心配しなくて良いのよ。
大丈夫だからね。」

そう言って、お母さんは私の手を握り締めた。



次の日、私は家に戻った。
六年ぶりの我が家はとても懐かしかったけど…そんな気持ちに浸る間もなく警察の人がやって来た。
そして、空白の六年間について、取り調べのようなことが始まった。



警察の人と話すことなんて、普通は滅多にない。
しかも、私は嘘を吐くしかないわけで…
警察の人の視線が怖くて、まっすぐに見ることが出来なかった。



「まず、連れ去られた時のことを教えて下さい。」

「は、はい、それがあまり良く覚えてなくて…
気が付いたら、なんだかよくわからない場所にいたんです。」

「よくわからないとはどういうことです?」

「で、ですから…はっきり覚えてなくて…」



質問は長い時間続いて、私は緊張のあまり、貧血を起こしてしまった。
そのおかげで少し休ませてもらえることにはなったけど、私はこれ以上嘘を吐き通せる自信がなかった。



大丈夫なんだろうか?
私の嘘なんてもうとっくに見破られてるかもしれない。
でも、本当のことは言えない…



私は警察の人が怖くて仕方がなかった。
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