夢幻の騎士と片翼の王女
「ただいま。」

「おかえりなさい。」



今、私は別荘に住んでいる。
最初は、マスコミから逃げるためだった。
連日連夜押し掛けて来るマスコミが怖くなって、しばらくはホテルで暮らし、それからここにやって来た。
最初はお母さんが付いてきてくれて、しばらく一緒に暮らしてたけど…
実家にはお父さんもいるし、いつまでもお父さんを一人にしておくことは出来ない。
だから、私は一人で大丈夫だからって言ったんだけど、家族はみんな私のことを心配してくれて…
なんと、お母さんに変わって、兄さんがここに来ることになったんだ。
最近は、自宅にもマスコミの人は来なくなったらしいけど、まだなんとなく実家には帰りたくなくて、ここに住み続けている。



兄さんは、近くのスーパーで働いている。
夕方には帰って来るし、お昼にもここに戻って来る。
働いてる間も、ずっと私のことを気にかけていてくれるんだと思う。
みんなに気を遣わせてばかりで、ただただ申し訳ない気持ちになってしまう。
家でも何もしないで良いって言われてるけど、最近、少しずつ家事をするようになった。
料理はまだあんまり出来ないけど、ちょっとした掃除や片付けをやってる。
せめて、そのくらいはやらないと申し訳ないから。
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