夢幻の騎士と片翼の王女
「わ、私はお兄ちゃんみたいに出来てないから…
家族より、リュシアン様の方が大切だって思うわ!」

それが本心かどうかはわからなかったけど…
そんなことを言ってしまったのは、多分、優し過ぎる兄さんへの反発みたいなものだったと思う。



「リュシアン…様って……」

「わ、私の好きな人よ!
お兄ちゃんだって聞いたでしょ?」

「あぁ…なんとかいう国の王子様だったっけ?」

「ユーロジアよ!」



兄さんは、私の言うことをやっぱり信じていない。
妄想にとりつかれた可哀想な妹だと憐れんでいる。
そんなの当然のことだけど、そのことがなんだかとても頭に来てしまった。



「信じてないくせに…!」

「そんなことない。信じてる。
おまえは、ユーロジアの王子様のことが好きなんだよな。」

「ちょっと来て!」

「な、なんだよ!」

私は兄さんの腕を掴み、そのまま屋根裏に引っ張って行った。
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