夢幻の騎士と片翼の王女
「俺にもその箱はどうしても開けられなかった。
でも…開いたんだな。
どうやって開けたんだ?」

「うん、底にちっちゃな螺子が付いててね…これ、どうやらオルゴールだったらしくて、螺子を巻いたら音楽が流れて来て、自然に蓋が開いたんだ。」

「螺子?」

兄さんは怪訝な顔をする。



「どこにあるんだ?」

「だから、底に……」

兄さんから小箱を受け取った私の目は、驚きのあまり大きく見開かれた。



「螺子が…ない。」

兄さんは、なんとも言えない顔をして私を見てた。



「本当だよ。
本当に螺子があったんだから!」

「あぁ、わかった。」

信じてないくせに…!
兄さんの言葉が、私の神経を逆撫でした。



「本当に、ここに螺子があって、それを回したら…」

「わかってる。音楽が流れて、蓋が開いたんだよな?」

「そうよ!そして、箱の中に入ってたのがこの指輪よ!」

私はますます感情的になって、左手を兄さんの前に差し出した。



「わかったって。俺はお前の言うことを信じてるから。」



嘘ばっかり!
兄さんの瞳には哀れみがこもってる…
私を可哀想な子だと思ってることがよくわかる。



仕方のないことかもしれない。
螺子があったことを私には証明出来ないんだから。
ただでさえおかしいと思われてる上に、またおかしなことを言ったのだから、兄さんがそういう態度を取るのもわかる。
私を刺激しないようにって思ってるんだろうね。



(でも、螺子は本当にあったんだから…)



私は悔しさに、唇をぎゅっと噛んだ。
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