夢幻の騎士と片翼の王女
亜里沙が、台に茶の用意をして持って来た。



「亜里沙、ここには使用人はいないのか?」

「は、はい、ここではこういうことは自分でします。」

「そうか…」



可哀想に…
亜里沙は、庶民の娘だったのだろう。
使用人の一人もいないなんて…
そういえば、ユーロジアにいた頃より痩せている。
きっと、ここでの暮らしは大変なのだろう。
気の毒なことだ。



しかも、二人ともなんだかとてもおかしな服装をしている。
髪型も見たことのないようなものだ。
こういうのが日本の流行りなのだろうか?



亜里沙は、茶を皆の前に一つずつ置いて行く。



「リュシアン様…今のお話…
私も全く同じです。
もしや、その指輪は、蓋のない箱に入っていたのではありませんか?」

「その通りだ!
子供の頃にみつけた蓋のない箱…
その中に、この指輪があったんだ。」

「や、やっぱり同じです!
そして、箱の底にあった螺子を巻いたら…」

「あぁ、そうだ、その通りだ!
箱から音楽が流れ出し、蓋が勝手に開いたんだ!」



亜里沙は、興奮したような顔で何度も頷いた。
そうか…亜里沙も俺と同じ体験をしたんだ。



指輪が輝きを増した時、なんらかの力によって、亜里沙はユーロジアへ…
そして、俺はこの日本に飛ばされた…
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