夢幻の騎士と片翼の王女
(嘘……)



不安な気持ちを懸命に否定しながら、私は森の中を歩き続けた。
だけど、今の状況がまともじゃないことに、私はすでに気付いてた。



だって、近くの森はどう考えてもこんなに深くなかった。
私はもうずいぶん歩いてるけど、なかなか森は途切れない。
考えるとますます不安になるからなるべくそのことを考えないようにして、私はひたすらに歩き続けた。



(あ……)



ようやく木々がまばらになり、少し先に明かりのようなものが見えて、私はほっと胸をなでおろした。
私はもしかしたら、なんらかの病気にかかっているのかもしれない。
記憶障害とかなにか…きっと、そういうものだと思う。
どこかで電話を借りて、明日、お母さんにこっちに来てもらおう…
そう思うと、なんだか心細くて涙が出そうになった。
自然と足取りが速くなる。



「え……」



深い森を抜け、私が目にしたものは、なんと、西洋風のお城だった。
細長い塔が連なった、童話にでも出て来そうな大きな城だ。



(……やっぱりおかしい。おかしすぎる。
こんなものが現実にあるはずない。
私、頭がどうにかなっちゃったんだ。
何か、おかしなものでも食べたかな?
……そういえば、パスタに入ってたきのこは食べたけど、まさかあれが毒きのこで幻覚見てる…とか?
あ…それか、もしかしたら、お城の真似したラブホ!?)
 


そうか、そういうのがあった。
私がこっちに来てない間にスーパーが出来てたくらいだもの。
ラブホが出来てても、不思議はない…はず。
とはいえ、この閑静な別荘地にラブホなんて不自然な気はするけど…



とにかく、私は、そのお城を目指して歩くことにした。
それ以外、思いつくことがなかったから。

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