夢幻の騎士と片翼の王女
取り引き(side アドルフ)




「アドルフ…どうかしたのか?」



私は、頭に血が上っていたせいか、よほどおかしな顔をしていたのかもしれない。
陛下は私を見て、驚いたような表情をされていた。



「陛下…お願いがあります。」

「あらたまって…何だ?」

「実は…リュシアンの女を私の側室にしたいのです。」

「な、なんだと!?」



陛下は目を大きく見開き、呆れたように私の顔を見つめられた。



「アドルフ…どうかしたのか?
ジゼルとなにかあったのか?」

「いえ、何もございません。」

「では、なぜ、リュシアンの女が欲しいなどとたわけたことを言うのだ?」

「リュシアンの女とはいえ、その女は今日城に着いたばかりです。
まだ手を付けたわけではありません。」

「しかし……おまえは明日、ジゼルと結婚するのだぞ。
何も側室をもってはいけないと言っているのではない。
だが、結婚式の前日にそんなことをしては、ジゼルとて気分は良くないだろう。
しかも、なぜ、よりにもよってリュシアンの女を欲しがるのだ?」



(それは…あの女がアリシアだからだ。
永い永い時を経ても、少しも変わらぬ想いを抱いていた愛しいアリシアだからだ…!)



だが、そんなことを言えるはずがない。
言ったところで、私の頭がおかしくなったと思われるのが落ちだ。



「ひ、一目惚れしたのです。
どうしてもあの女を私のものにしたい。
どうか、お願いです。
あの女を私の側室に…!」

なんと陳腐な理由か…
そう思いながらも、私は、恥を捨て、陛下に懇願した。
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