夢幻の騎士と片翼の王女
取り引き(side アドルフ)
*



「アドルフ…どうかしたのか?」



私は、頭に血が上っていたせいか、よほどおかしな顔をしていたのかもしれない。
陛下は私を見て、驚いたような表情をされていた。



「陛下…お願いがあります。」

「あらたまって…何だ?」

「実は…リュシアンの女を私の側室にしたいのです。」

「な、なんだと!?」



陛下は目を大きく見開き、呆れたように私の顔を見つめられた。



「アドルフ…どうかしたのか?
ジゼルとなにかあったのか?」

「いえ、何もございません。」

「では、なぜ、リュシアンの女が欲しいなどとたわけたことを言うのだ?」

「リュシアンの女とはいえ、その女は今日城に着いたばかりです。
まだ手を付けたわけではありません。」

「しかし……おまえは明日、ジゼルと結婚するのだぞ。
何も側室をもってはいけないと言っているのではない。
だが、結婚式の前日にそんなことをしては、ジゼルとて気分は良くないだろう。
しかも、なぜ、よりにもよってリュシアンの女を欲しがるのだ?」



(それは…あの女がアリシアだからだ。
永い永い時を経ても、少しも変わらぬ想いを抱いていた愛しいアリシアだからだ…!)



だが、そんなことを言えるはずがない。
言ったところで、私の頭がおかしくなったと思われるのが落ちだ。



「ひ、一目惚れしたのです。
どうしてもあの女を私のものにしたい。
どうか、お願いです。
あの女を私の側室に…!」

なんと陳腐な理由か…
そう思いながらも、私は、恥を捨て、陛下に懇願した。
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