ヴァージンの不埒な欲望

拓夢さんは、何を見ていたのだろう。何を一人で考えていたのだろう……?

次に会えた時、訊いてみようか?何か、心配事がありますか?私にできる事はありませんか?と。

ダメ、ダメ!私なんかじゃ、絶対に相談にのれない。『なんか』と言うのを、今は許して。自分を卑下しての『なんか』ではないから。

高学歴で高身長、高収入……かどうかはわからないけど、若くして会社を起こし、拓夢さんに仕事を依頼した人達はみんな拓夢さんに感謝をしていた。カッコよくて優しくて。大好きな船や飛行機の話をする時は、瞳をキラキラさせて。そういう子どもっぽい面を持ちながらも、ちゃんと周囲に気遣いのできる大人の男性で。

私には、拓夢さんの欠点が思い浮かばない。わたしにとって拓夢さんは『完璧な人』だ。そう思っている人に、アドバイスなんてできる訳がない。拓夢さんが教祖様なら、私はその宗教に間違いなく入信している。拓夢さんならきっと……

「いや、いや、そうじゃなくて!」

おかしな方向に広がりかけた妄想を、両手でかき散らす。

そもそも拓夢さんは、本当に悩み事を抱えているのか?私の思い込みではないのか……?

「あぁ~、全然わからない~!!」

天井に向かって声を張り上げながら、両足をドタドタと動かした。

両親も兄も、今日は朝から出かけていた。自宅に一人っきりなので、心の中のモヤモヤを思う存分吐き出していた。


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