ヴァージンの不埒な欲望

横山さんの言葉に反論する事もできず、私の全身が一瞬で熱を持った。

再び横山さんにパチンとウインクをされ、私は口をパクパクしながら、挨拶もそこそこにお店の外に追い出された。

「横山さんは、相変わらず賑やかだな」

苦笑しながら、拓夢さんが言った。横山さんの囁きは、拓夢さんには届いていなかったようで、とりあえずホッとする。

「賑やか」で済まされるものじゃない!心の中で叫ぶが、拓夢さんに不審がられても困るので、拓夢さんと同じように苦笑を浮かべるだけに止めた。

横山さんに、すごく振り回された気分だ。でも、それを本当に不快に感じないのは、横山さんの人柄のせいだろう。

ヘアサロンで会った上野さんに下田さん。洋服の相談にのってもらった横山さん。

初めての慣れない場所に、初めて出会う人達。今までの私だったなら、まともに会話もできずに、ひたすら疲れるだけだっただろう。

斜め前にいる拓夢さんを、そっと見つめる。

拓夢さんが、私の事を考えて選んでくれた場所とその人達に出会って、たくさんのものをもらった。

とても自分本意な、傲った気持ちだとは思う。でも……

拓夢さんの優しさに包まれたようで、心の真ん中の一番柔らかな部分が、温かくなっていくのを感じた。

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